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青い空。

どこまでも真っ直ぐな道。


田んぼが数キロ先まで見える。




牛と子供。

集落。


ときどきこっちを見ている。








タイのバンコクからカンボジアのシェムリアップまで

バスに揺られている。


バスは2回乗り換え、

カンボジアへの国境を越えたところで

大型バスに乗り換えた。



国境を渡ってすぐ、大雨が降って、

ボクたちに大きな虹を見せてくれた。

突然の雨に、一時は怪訝な顔を浮かべたが

どうやら歓迎されているようだった。





車内は混雑していて

そのほとんどが西洋人。



バスの中はエアコンの噴出し口から

作り出された微風が漏れ、快適温度を保っている。








道中、休憩をとると

一つの集落で降ろされた。



バスのドアを開けた瞬間に

生ぬるい空気が車内に入り込んでくる。



ドアを一歩出ると、

肌をチリチリ焼くような暑さと

肌の黒い子供達が数人駆け寄ってくる。

なぜかみんな5才前後の女の子ばかりだった。


みんな埃まみれになってはいるものの、

赤や黄色のかわいらしい服を着ている。







子供達はバスから出てくるひとに

片っ端から

「どこからきたの?名前は?コインをちょうだい」

と言っている。



一人の女の子に「JAPAN」と答えると

100円硬貨を嬉しそうに見せてきて

「コインをちょうだい。交換しよう」と言っている。



外貨コインなんて両替にもまわせないので、

純粋にコレクションしているのだろう。



だが、あいにくコインはバスの厳重にロックされたバッグパックの中にある。


これでは子供達に渡せるわけもなく、

「ごめんね、もってないんだ」というしかない。







ボクは子供達に嫌な気はしなかった。

「もってない」というと簡単に引き下がり、

また別の観光客に同じ質問をする。




彼女達はある意味ではちゃんと働いているのだ。


暑い日に、エアコンのきいた部屋で

一日中ゴロゴロしてるボクなんかより、よっぽど世のためになっている。


それがゆえ、彼女達に興味がわいた。







気になってしばらく見ていると、

全観光客に聞き終えて満足したのか、

子供達が集まってゲームを始めた。

「一緒に見ていいか?」と聞くと、笑顔で答えた。



ゲームはおはじきのようなもので、

動物を模った色とりどりのコマを

はじいて勝敗を決めるようだ。



数回ゲームをし、ふいに黄色い服を着た一人の女の子が、

そばにいたボクに話しかけた。


どうやら手に持っていたミサンガをボクにくれるという。


「フリーフリー」といいながら手首にまいてくれそうになるのだが、

「金をとられるのではないか」という心配より

「せっかく作ったのだから他の人にあげたほうが、この子にとっていいんじゃないか」と

思いとどまり、「ありがとう」と断った。





しばらく子供達を見ながら休んだあと、

優しいコー平氏に5円玉をこっそりもらい、

バスが出発する間際に黄色い服の女の子にあげた。




みんなにコインをあげたかったが、

本当に持ち合わせが足りなかったので

「これは内緒だぞ。みんなには言うなよ。」

と固く口止めして、バスに乗り込んだ。





バスの発車時間が近づき、

窓の外を見てみると

子供達が集まり、今日の戦利品を互いに見せ合っている。


黄色い服の子も、ボクからもらった5円玉を誇らしげに自慢している。







バスは再び走り始める。

信号も曲がり角もない道をただひたすら走る。





子供達は幼いながら、クメール語、英語、

それに日本語も少し理解していた。



毎日毎日こんな風に訪ねてくる観光客を相手に

毎日毎日同じことをしているのだろう。



ボクのあげた5円玉は
大事にしてくれるだろうか。

5円玉で彼女達を救うことはできないが

なにかかわっただろうか。




コインをもらえなくても嫌な顔せずに

楽しく遊んでいた彼女達。

みんな自由だった。





楽しそうな彼女たち、

くらべてボクはどうだろう。

救われたのはボクの方だったのかもしれない。










窓の外を見ると

夕日が差してきている。



走るバスの中で彼女達のことを想い、

やるせなくなって

バスの天井を見上げた。




ボクらをのせたバスは

まだ真っ直ぐ走っている。

虹はいつしか消えていた。











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